日本禅宗史への扉

【葬送と授戒会】

現在は、僧侶が葬送に携わることは日常的であるが、元来、僧侶は祈祷活動を中心に行なうものであった。上層の人々への葬送は行ってはいたが、とりわけ民衆の葬送への関与は希薄だった。そのような中、禅僧、特に曹洞宗の僧侶たちが、葬送・年忌法要や水陸会〈すいりくえ〉(施食会〈せじきえ〉、食物を施す法要)など、いわゆる葬送活動を行うことにより、禅宗が各地に発展していったことは注目できる。しかも、檀越〈だんおつ〉である武士だけでなく、農民・鍛冶師・舞者やその母など、多くの民衆にも戒名を授けて、引導法語〈いんどうほうご〉を述べ、葬儀を行った。また、在俗者に一定期間(3〜5日間)修行させ、生前に戒名を授ける授戒会〈じゅかいえ〉活動によって、武士や民衆に受け入れられていった。

 

江戸期の檀家請〈だんかうけ〉制度の母体は、戦国期から始まっていたといえる。