【禅の歴史と文化】
日本文化の源流の多くは宗教に求められる。とりわけ禅宗は、日本人の生活文化に大きく浸透していった。栄西・道元〈えいさい・どうげん〉らによって日本の禅宗が確立されると、日中間の盛んな禅僧の往来を促し、中国王朝の禅文化がもたらされるようになった。
「不立文字〈ふりゅうもんじ〉」(文字にとらわれない)、「教外別伝〈きょうげべつでん〉」(教典に依らない)という禅思想は、観念的な知識にとらわれずに物事の本質を見据えるという芸術文化の思想と合致し、やがて能楽、茶道などの日本文化に摂取されていく。
当初、舶来品だった禅文化は、日本独自の文化として再生し、日本文化の発信拠点としての役割を担ったのである。