日本禅宗史への扉

【精進料理と普茶料理】

禅宗の料理の特徴として、精進料理と普茶〈ふちゃ〉料理がある。

 

●精進料理

「精進」とは、善を施し悪を断つ修行に励むことを指し、これが転化して肉食を避けることを精進料理と呼ぶようになった。道元は、食事も坐禅や作務などと同じ禅修行の一つであるとした。禅寺で日常、修行僧が食べる食物は素朴なものである。

小食〈しょうじき〉(朝飯) お粥・ごま塩・漬物

中食〈ちゅうじき〉(昼飯) 麦飯・味噌汁・漬物・おかず1品

薬石〈やくせき〉 (夕飯) 麦飯・味噌汁・漬物・おかず2品

夕飯は元来略式の食事であり、飢えや寒さをしのぐため、温石〈おんじゃく〉を腹に抱えて寝たことから薬石と呼ばれた。懐石もこれと同じ程度の粗末な食事を指し、懐石料理の由来となっている。

 

●普茶料理

黄檗宗を開いた隠元隆g〈いんげんりゅうき〉(1592〜1673)が伝えた中国風の精進料理。普く〈あまねく〉多くの人に茶を出すことを普茶といい、寺院での茶礼〈されい〉の後に普茶料理が出された。油脂類、くず粉を多量に用い、高タンパク・低カロリーの料理で、数人分の大きな器に盛り込むところに特徴がある。

 

●禅宗ゆかりの食材

いんげん豆は隠元隆gが中国から伝えたことに由来し、タクアンは紫衣〈しえ〉事件で著名な臨済宗大徳寺の沢庵宗彭〈たくあんそうほう〉(1573〜1645)が漬け始めたとも、沢庵の墓が大根漬けに似ているからとも言われている。