日本禅宗史への扉

【洗面・歯磨きのすすめ】

道元は『正法眼蔵』洗面の巻を著し、顔を洗い、歯を磨くことを定めている。道元は次のように言う。

 

中国では日頃、農夫や漁夫という一般の人々まで洗面を忘れることはない。しかし、楊枝を使って歯を磨くという風習がなく、大宋国の高僧も楊枝を使うことを知らないから口臭が強い。それに比べると、日本人は楊枝を使い歯を磨くことを忘れない。

 

そこで永平寺では洗面し、歯を磨くことにする。楊枝の長さは自分にあったものにせよ。楊枝の端をかみ歯にあてる。また、刮舌〈かつぜつ〉の法(舌の粕を取る方法)であるが、楊枝を二つに引き裂き、裂け口の鋭利な方を横にして、舌の上にあててこする。血が出たら止めよという。

 

微笑ましささえ感じられる。すこぶる懇切である。