箱根駅伝 −2012、よりハイレベルなチームへ−(2012.2)
駒澤大学教育後援会の皆様、箱根駅伝、あたたかいご声援、誠にありがとうございました。トップとは大差でしたが、明大・早大をとらえ、なんとか準優勝を飾ることができました。これも、ひとえに皆様の応援の賜物であります。
それでも、駒大駅伝チームの過去15年の戦績は、優勝6回、準優勝5回、3位が1回、それ以下が3回です。これからすると、やはり「2位ではだめです」ね。元気を出します。
東洋大学チームは見事なレースぶりでした。駒澤大学も優れたランナーの基準とされます1万m28分台の選手が昨年は1人〜2人であったのに対し、今年度は7人も出ました。かなり、ハイレベルの選手が揃いましたが、往復で9分2秒もの差がついてしまいました。
東洋大5区の柏原選手の4分は仕方ないにしても残りの5分はどういうことでしょうか。一言で言えば、東洋大学は調整が万全で、少しのミスもなかったということです。そこには選手層の厚さに若干差があったということではないでしょうか。
今年度の箱根駅伝は昨年1月3日に3位でゴールした翌朝未明の練習から始まりました。途中、3月11日には、東日本大震災・原発事故という未曽有の大災害に遭遇いたしました。犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げ、ささやかですが、募金活動にも参加させていただき、一日も早い地域の復興をお祈り申し上げつつ、私どもが一生懸命に走ることが、被災された方々のお力に繋がるのではないかと考えて、練習に精進してまいりました。なお、募金活動に対して、被災地の中学生から手紙をいただき、逆に励ましの言葉をいただきました。これ以上の応援はありませんでした。
こうして迎えた10月10日の出雲大学駅伝では、アンカーの窪田選手が区間賞の頑張りで、トップの東洋大に26秒差まで迫る準優勝でした。11月6日の全日本大学駅伝では、2区の村山君が中盤からトップに踊り出て、独走態勢に入り、4人が区間賞という見事な走りで、アンカー窪田君に繋ぎました。東洋大の柏原君の猛追を受けましたが、無難な走りで優勝のテープを切りました。3年ぶりの優勝です。
そして、箱根駅伝に臨みました。1区撹上君が3位の好スタートを切りましたが、2区村山君が後から来た東洋大の設楽啓太選手らを終始引っ張る形となりました。消耗が激しい形です。やはり、最後の登り3kmで消耗してしまい、1分の遅れをとり、5位に落ちました。3区の由布君も波に乗れず、東洋大に2分13秒の差。柏原君の登場前に東洋大の独走を許してしまい、順位も6位。4区の久我君はまずまずの走りで、4位に浮上しましたが、東洋大とは2分27秒差。5区の井上君は足に違和感があり出雲・全日本にも出場せずに調整し、何とか間に合わせ、そこそこの走りで4位を維持。往路5時間31分28秒は本学の最速記録でしたが、東洋大とは6分43秒差でした。
二日目、6区の山下りは去年、区間新の「山下りの神」と称された千葉君。同君も、足指の軟骨を削る手術を行い、調整して、間に合わせてきました。それにしては、よく走り、東洋大の選手とは23秒の差でした。それでも、7分6秒の差となり、7区の上野君、8区高瀬君も頑張りましたが、差は9分29秒に広がりました。
しかし、9区の窪田君は区間賞の走りで、明大・早大を抜いて2位に浮上し、2分短縮して、一矢を報い、復路優勝の望みも少しだけ湧きました。46秒を縮めればと。しかし、10区アンカーの後藤田君は逆に1分33秒の差をつけられてゴール。総合タイムは11時間38秒で、大差をつけられましたが本学の最高タイムでした。2日間ともに向かい風も少なく、天候に恵まれての好記録でしたが、より完成されたチームが求められる時代となりました。
駒大陸上競技部は教育後援会の皆様をはじめ多くの皆さんの熱い応援に支えられての今日があります。また、とくに、ブルーペガサス・応援指導部の皆さんには、箱根でも応援を頂きました。ご承知のように、今年の箱根では、農大の5区の選手が大ブレーキを起こし、トップが通り過ぎてから40分も遅くれました。この間に帰ってしまった応援団もありましたが、本学の諸兄姉は、あのコスチュームで寒い中を待ち続け、最後のランナーを応援したとのことです。
のちに、同部の学生にその様子を尋ねると、「最後のランナーまで、応援するのは当たり前のことです」と、いとも簡単に言います。実に清々しい精神です。「ああ、駒澤の同窓でよかった」と思った瞬間です。教育後援会の皆様をはじめこのようにあたたかい皆さんに支えられ、応援していただいていることを誇りに思います。
道元禅師の禅は「只管打坐」(しかんたざ)、ただひたすらに打ち坐(すわ)るのみ、しかも、そこにしか、悟りはない、という行(修行)と悟り(証)を一体とするシンプルな禅です。この御教えに習えば、駒澤大学陸上競技部はさしずめ「只管打走」、ただひたすらに打ち走るのみです。この走るという実践、行の中に学びがある。学生たちは走るという実践・行の中から、人の道、人生への学びを得ているものと信じます。ここに「行学一如」(ぎょうがくいちにょ)の理念があり、大学教育の原点の一つがあるのではないでしょうか。今後とも、精進してまいります。皆様、よろしくお願い申し上げます。
平成23年2月
駒澤大学陸上競技部 部長
文学部教授 廣瀬良弘