良弘「走々」散文(陸上競技部部長として)

 

箱根2010 −大学教育の原点ここにあり−

 教育後援会の皆様をはじめ駒澤大学の関係の皆様、応援ありがとうございました。お蔭様で、総合準優勝、復路優勝の栄誉を勝ち取ることができました。

 

今年の箱根駅伝は予選会からのスタートであったために、かなりハードなスケジュールでした。そのためもあってか、チームでは4位と五位にあたる選手が欠場です。自己管理は徹底していましが、難しいものです。こうした中では、最高の布陣でした。ただ、1区の展開が昨年と大きく違いました。昨年は団子状態で進み、牽制しあう展開でした。団子状態を願っていましたが、今年は早い段階から縦に長い列となり、スピード勝負の展開となりました。徐々に上げていく1学年の後藤田君には不向きな展開でした。昨年の区間賞のタイムは今年の16位です。2分も速い展開でした。

 

 花の2区は4年間続けて宇賀地君。2分47秒差を追って、猪突猛進。負けん気が強い宇賀地君。当然のこと、突っ込みます。区間には権太坂と残り3キロにきつい坂があります。しかし、15キロまでは、あの日大ダニエル君より早いタイムです。東海大の話題のスーパールーキー村沢君のいるグループにわずか11秒差まで接近しました。全日本(伊勢路駅伝)では、2段・3段のロケットスパートで圧倒したことが蘇ります。最後の登りで、やや疲れがでたようですが、区間3位の粘りで、5人抜きを果たし、駒大エースの意地と貫禄を見せました。13位です。

 

 3区は3年の飯田君。藤沢遊行寺の坂など、全体に下り坂ですが、なかなか、ピッチが上がりません。13位のままです。4区の1学年の久我君は区間8位のまずまずの走りでしたが、13位のまま。そして、山登り5区、昨年走れなかった4年の深津君。ここは自分しかいないと、決意の山登り。5人抜きを演じて、8位にまで押し上げました。1区では、昨年の悪夢が一瞬よぎりましたが、宇賀地・深津の4年生の走りで、復路に希望がわいてきました。総合5位あるいは3位をも・・・。ただ、前の7位の早大との差は1分11秒、9位の青学大とはわずか1秒差、10位の城西大とも7秒差で、楽観は許されません。

 

 復路6区山下りは1年の千葉君。前を走る早大は一昨年区間賞の加藤創大君。かなり厳しい展開が予想されました。山下りは膝に負担がかかり、勾配が緩やかになる残り3キロでブレーキを起こす選手が何人もいますが、なんと、区間賞で入ってきました。6位です。しかも、5位・4位も射程内に入っています。駒大は俄然、活気付きました。3位あるいは2位も狙えるかもしれないとの思いが沸いてきました。

 

7区は1年の撹上君。期待どおり、区間4位の走りで東農大と中大を抜いて、4位に浮上しました。8区は2年の井上君。区間3位のみごとな走りで、4位をキープし、しかも、上位校にぐっと近づき、望みを主将高林君に託しました。

 

9区は4年高林君。下り坂、思い切って突っ込み、中大に一気に追いつき、3位に浮上し、山梨学院も抜いて2位にまで押し上げました。テレビではあまり映ることなく、いきなり、追いつくシーンや抜き去ったシーンでした。どうもカメラバイクの故障などのハプニングがあったようです。簡単に2位に浮上したようですが、実は危険な突っ込みだったのです。高林君はこれを難なくやってのけました。区間賞の激走でした。

 

10区アンカーは4年の藤山君、結果的には区間3位の見事な走りで、2位をキープし、箱根では7分16秒あった東洋大との差を3分46秒差にまで追い上げました。途中、足が痙攣するという緊急事態となり、大八木監督が二度ほど監督車から降りて、水を渡すというシーンがテレビにも映っていました。藤山君と併走し、大声で指示を出している清々しい姿は、選手と苦楽をともにしている大八木監督ならではのことです。監督はそのために毎朝、小一時間、走っています。

 

 皆様ご覧のように、18位から、ひた走りにひた走り、文字通り一歩一歩、順位を上げ、トップに迫り、復路優勝・総合準優勝を果たしました。この選手一人一人のいぶし銀のような見事な走りで襷をつないでいく姿は、シード落ちという13年ぶりの試練に耐え、日々精進に精進を重ね、予選会から勝ち上がってきた駒沢大学駅伝チームの不断の努力の姿そのものでした。それがオーバーラップし、感動的でした。日々の努力の姿・精進の姿が「箱根の走り」に自然と溢れ出る。それを目の当たりにして、感動を覚える、これこそ大学駅伝だと思います。大学も厳しい状況の中、これで、また、一年が頑張れる。大きな力を得た思いです。

 

 これらのすべてが大学教育の原点だと思います。もちろん、大学教育の柱には学問教育・研究がありますが、もう一つの大きな柱がここにあると思います。受験生も増加しました。駒大らしい地道な力強い走りが好感をもって迎えられたことも影響しているでしょう。

 

この大きな感動を与えてくれた選手諸君・監督・コーチ、走れなかったけれど、その分、選手を支えたスタッフ、マネージャーの諸兄姉、協力してくださったOB会の皆さん、そして、いつも、どこにでものぼりをもって駆けつけて、惜しみない応援をしてくださる教育後援会の皆さん、陸上競技部後援会の皆さん、大学関係の皆さん、近隣住民の皆さんに心より御礼申上げます。

 

駒澤大学陸上競技部 部長

文学部教授 廣瀬良弘