良弘「走々」散文(陸上競技部部長として)

 

三大学駅伝

 教育後援会の皆様をはじめ駒澤大学の関係の皆様には、いつも、惜しみないご声援をいただきまして、誠にありがとうございます。うまく行かなかったときには、元気を取り戻す励ましとなり、勝利したときには、この喜びをもう一度ともに味わいたいという思いから、さらなる精進を決意するきっかけとなります。心より感謝申し上げます。

 

 さて、2008年度の三大学駅伝はご承知のように喜びあり、悔しさありの例年にない起伏の激しい年度でした。

 2007年11月の全日本大学駅伝(伊勢路駅伝)と2008年の箱根駅伝に優勝を果たしていた我が駒澤大学駅伝チームは2008年10月13日の第20回出雲全日本大学選抜駅伝に、密かに年度をまたがっての三大学駅伝制覇をねらって臨みました。1区4位(星)、2区4位(我妻)、3区3位(深津)と順位を上げ、4区のキャプテン池田君が17秒差をひっくり返し、東洋大を抜いて、逆に8秒差をつけて、5区の高林君に繋ぎました。高林君は2位東洋大に30秒差、6区にダニエル選手を擁する5位日大に1分29秒差をつけて、6区の宇賀地君に繋ぎました。宇賀地君は持ち前のガッツで飛ばしましたが、8キロ付近、ゴールまで2キロ余のところで追いつかれ最終的には、わずか14秒差で敗れました。大八木監督のほぼ思い通りのレース運びであったかと思いますが、残念な結果でした。でも、とても、すばらしいレースであったと思います。価値のある準優勝でした。

 

 のちに同窓から聞いたのですが、ある家電売り場のテレビの前の人だかりで、児童が小さな拳をにぎり、目に涙をいっぱいためて「コマダイ ウガチ ウガチ ガンバレ」と何度も何度も叫んでいたそうです。宇賀地君の決死な形相での懸命な走りは、小さな子にも感動的だったのだと思います。

 2008年11月2日、第40回全日本大学駅伝は、おかげさまで、3連覇を遂げることができました。3区までは東洋大、4・5・6区は早大がトップ、そして、駒大は7区(太田)でトップに立ち8区深津君はそのままトップを維持し、見事優勝・3連覇の栄冠を手にさせていただきました。1区(星)2位、2区宇賀地君は早大エース竹澤選手と競り合い、早大と1秒差・4位で3区(我妻)に繋ぎ、4区(池田)も3位、5区(井上)は2位となり、6区(高林)も2位を維持し、高林君は4秒差まで迫り、区間賞を取り、7区(太田)につなぎました。太田君は4秒差を付けてトップに立ち、区間賞を取りました。8区深津君は2位早大に44秒差を付けて優勝のテープを切りました。

 全日本は2連覇、一年置いて2連覇、一年置いて優勝、一年置いて3連覇、ここ11年間で8回優勝の快挙でした。箱根駅伝に向けて幸先の良いスタートを切ることができたと思われました。

 

 11月・12月と風邪・ノロウイルス等にかからないようにするとか、どの薬は漢方でもドーピング検査に引っかかるとか、節制・用心の日々でありました。こうして、むかえた2009年正月2日・3日でした。

 2009年、正月、今年の箱根駅伝は同窓会の皆様をはじめ、駒澤大学関係の皆様の厚いご声援をいただきましたにもかかわらず、13位に終わり、シード権を失うに至りました。大学自体が厳しい状況の中で、せめて箱根で明るいニュースをと期待してくださった方々も少なくなかったと思います。しかし、宇賀地君と並ぶエースの深津君が故障で欠場という事態に、選手たちの間には目に見えない動揺が走っていたのかもしれません。第1区は19位と出遅れましたが、差は1分程度であったので、各選手がペース配分を守り後半のスピードアップさえはかっていければと思いましたが、最後まで好転しませんでした。2区宇賀地君が懸命な走りで8位までひきあげましたがそれまででした。ただ、8区高林君の区間賞はせめてもの救いでした。

 

 大八木監督は大会ごとに目標タイムを立てますが、勝利した時のタイムは1分と違いませんでした。ところが、今回は14分も異なりました。流れというものの怖さを実感いたしました。

4年生のキャプテン池田君、アンカー太田君はしっかりとした走りでした。主務の高野君、女子マネージャーの長島さんをはじめとする4年生はバックアップにまわってくれた学生諸君をよくまとめてくれました。この4年生の時代、箱根は5位・7位・優勝・13位、伊勢路は3連覇と波乱万丈の4年間でした。3年生以下はこれらのすべてを向上のための良き財産として受け止めているはずです。

 一昨年の優勝校の順天堂大の助教授の計算によりますと、正月三が日の視聴率の1位と2位は箱根駅伝で、あれだけ、大学名を出そうとすると19億円近くの費用がかかるとのこと、どこの大学も優勝を目指してヒートアップしております。雑誌AERAに「学長室の攻防戦」の見出しが躍るほどです。幾年か前から力を入れているといわれていた東洋大・早大しかり、明大・青学大も箱根に出場してまいりました。一方で予選落ちした常連校もあります。このような中で、本学は大学のチームとしての節度ある対応を持続しておりますので、大学当局をはじめ教育後援会の皆様にも物心両面の応援を今まで以上にお願い申し上げる次第です。

 

 ともかく、教育後援会をはじめ駒大関係の皆さんが持つ、「のぼり」を拝見する度に元気が沸いてまいります。仏・神は我がチームに、大学とともに再生・復活のための試練を与えたものと思います。「この試練をバネにしなさい」ということだと思います。大八木監督率いる駒大陸上競技部は翌日の1月4日、早朝から例年通り、来年の箱根をめざして練習を開始いたしました。この精進振りは私たちの誇りとするところです。ここにも大学教育の原点の一つを見る思いです。まずは、私たちの駅伝チームが原点にたち返ってのスタートを切りましたことをお知らせし、今後とも、さらなるご支援のほどお願い申し上げる次第です。

 

陸上競技部 部長 廣瀬良弘